その昔、4円パチンコの稼働が全国的に低迷する中で、遊技台の商品としての品質をアップするために「商品企画課」を新設したホール企業が関東地区にあった。店舗数は19店舗の中堅ホールでもある。
かつてはチェーン平均で3万8000稼働を誇っていたが、ジリジリと稼働が下がり、ついに半減状態に。この状況を打開するために一人の社員が声を上げた。
「限られた原価の中で、どうやってお客さんに楽しんでもらうか。台粗をしっかりいただいて、稼働を上げるには大当り感が大切!」
ゲージ担当のこの社員は稼働が落ち始めた頃から、台の傾斜と釘の見直しをことあるごとに会社に進言していたが、あまり相手にされることはなかった。傾斜角度を揃えたデータに基づいて説明すると会社が動いた。
入社15年クラスの釘のエキスパート5人が集められ、商品企画課が立ち上げられた。メンバーはいずれもゲージには一家言ある者ばかりだ。このホール企業は統一ゲージを早くから導入していて、釘の技術レベルは高いがスランプの解消は課題でもあった。
そんななか、ユーザーが感じるスタート回数とホールコンのスタート回数には乖離があることを商品企画課の課長は発見する。
「スランプのある台」と「スランプのない台」の2つを用意し、どちらが気持ちよく打てたかという実験を行った。スタート回数でいえば前者が6回、後者が5.4回の違いだ。
「気持ちよく回ると感じたのはこっち。これがスタート6回の台」と片方の台に答えは集中したが、結果はその真逆。よく回ると感じた台は5.4回の方だった。
つまりお客がスランプと感じるのは入賞ムラのことでスタート回数ではない。スランプとは連続して回っていたかと思うとピタリと回らなくなったりする。そんな台でもホールコンのデータではスタートが6回として上がり、データ上はよく回る台となっているが、実際の打ち手はそれをスランプと感じ、腰が据わらない。
入賞ムラがなければストレスを感じることがないので粘りが出て稼働アップにつながる。
ここでもう一つ発見したことは、全台の傾斜角度がバラバラだったこと。いくらゲージを揃えても傾斜がバラバラではスランプも解消されるはずもなく、全台の傾斜を揃えることに着手した。
傾斜が揃うとお客さんから「もっと回せ!」という苦情が出なくなった。3カ月目から稼働が上がり、半年後には黒字へ転換した。
「台粗はお客さんが台の品質に付けた点数」(課長)という言葉の裏には、パチンコ台を“商品”として提供している自信がみなぎっている。
未承認改造(釘調整)について堂々と書いていますが、大丈夫ですか?
1000円あたり2回転が当たり前のやすだの某店舗に読ませたい記事ですね